Nina Simone & Piano
「最高傑作」という謳い文句だが、当初は歌声とピアノしか聞こえてこない作りに、ポップスを中心に聴いてきた耳はなじめませんでした。しかし、評判に偽りがないと気づくのに時間はかからず、今や、この1枚に出会うために音楽を聴いてきたのではという惚れ込みよう。他の作品でボーカルのつぼを押えたことで、この作品への導入となってくれた1と2。続く3の後半で弦楽器のようにコードを爪弾く部分で「革命のエチュード」を彷彿。力強い4とともにショパンの難曲をもひきこなしたであろうクラッシクで培われた確かなピアノ演奏力に完全降伏。弾き語りというスタイルこそ彼女の本質といわれることにも納得。こうなってしまうと無防御な心に5-9と続くどれもはずせない名唱名演奏が洪水のように押し寄せ、"1/fゆらぎ"の法則が効いている10では思考が完全に停止して生きているかどうかすら分からない状態に。危険です。
ライヴ・アット・モントルー 1976 [DVD]
もともとWeather Reportは公式ライブ音源が極めて少なく、ライブビデオソースに至ってはほとんど無い、という状況の中で、昨年海外でリリースされた映像がようやく日本でも発売されました。
映像も音声もかなりリファインしたようでその面では素晴らしいです。
何より加入直後のJaco Pastoriusのフレッシュな姿(髪が短い!)が鮮明にみられるという意味でこれほど貴重なソースは無いのかもしれません。
そのうえで非常に残念なのが"Cannon Ball"におけるカメラワークです。この曲はZawinulがJacoをオーディションした曲で、しかもオーディション時のテイクがアルバム"Black Market"に収録されたという重要な曲で、イントロとエンディングでJacoのフレットレス・ベースが非常に重要な役割を果たしているのですが、このビデオではJacoの姿はほとんど映りません。ロングショットも少なめだし。
まあこの映像の史料的価値に比べたら些細なことではありますが。
Jacoファンは"Cannon Ball"におけるJacoの勇姿を想像しながら楽しんではいかがでしょうか。
ビフォア・サンセット / ビフォア・サンライズ 恋人までの距離 ツインパック (初回限定生産) [DVD]
初めの作品「ビフォア・サンライズ」を観れば続編の「ビフォア・サンセット」をどうしても観たくなるし、また続編の方は初めの作品を観ていなければ成り立たないものなので、このセットは必然の組み合わせなのです。ましては「BS2」なんていうありがちなタイトルではないので、この2作品が同じ俳優によるリアル・タイムの続き物であるということには気付きにくいですからね。(くれぐれも順序を間違えて観ないように。)
ディスカッション・ドラマというジャンルがありますが、このシリーズも主役の男女の会話だけで成り立っていると言えます。最近はとにかく目まぐるしい展開と派手な演出で観客の気を引こうとする映画が多いので、ここまで延々と心理描写を中心に展開しながら、一瞬の弛みもなく引っ張るという映画は逆に新鮮に感じました。
それだけに、2人の主役の自然な演技(長台詞ばかり)と、それを支える監督の演出力が要求されると思いますが、彼らのチームによるライフワークと言えるようなぴったりと息の合った作品で、ドラマの中に思わず引き込まれずにはいられません。特に前者はベルリン映画祭で受賞したように、見知らぬ男女が旅先で出会い、次第に惹かれあっていく様子が、ドキドキするような恋愛の初期段階をぎゅっと凝縮したかのように伝わってきます。
この恋愛は、限られた時間の制約の中でこそ燃え上がる一時のアヴァンチュールに過ぎないのか、それともお互いを知り合っていくことでますます深まっていく本物の愛なのか?恋人同士で観た後なら、それぞれのやりとりの中での駆け引き、戸惑い、葛藤について、二人のディスカッション(コミュニケーション)が始まること請け合いです。
果たして「サンセット」のそのまた10年後にはどうなっているのか?二人は二度と巡り合えないような必然の組み合わせ(カップル)なのか?
キンキー・ブーツ オリジナルサウンドトラック
これは面白かったです!
この映画はなんと東京で1箇所しか上映しておりません!
(日比谷シャンテシネのみ)
そうなると、割と社会的色彩が濃かったり、倫理的に危ういシーンが出てきたりするのがパターンですが、本作は「硬派なエンターテイメント」って感じです。
世代をわかたず見れると思うから、もっと多くの映画館で上映してもいいのにな。
田舎の靴工場は経営者であるお父さんの死で青息吐息。
頼りない跡継ぎの青年は、ローラと呼ばれる女装趣味のダンサーがよく履きつぶしてしまうブーツに命運を賭けます!
ミラノの展示会に向けてすべてをつぎ込む若き経営者。
そこに経営者の婚約者と女装趣味のデザイナー、父の代から働いてくれている従業員たちが絡み合い、人間模様がつづられていきます。
まず音楽がとっても良かったです!
(サントラ欲しい)
後はぐっとくる場面と台詞!
「工場で大事なのは建物や設備ではなく、そこに働く人間だ」
「君は誰よりも男らしい」etc。
途中の酒場のシーンでややラストまでのストーリーが見えてしまうかもしれませんが、
後半はやっぱりグッと来ます!
「Brass!」という映画と構成がほぼ一緒だったような気がしますが、イギリス映画ではこの題材がよく使われるのかな・・・