空が青いから白をえらんだのです―奈良少年刑務所詩集
表紙カバーの写真は、まさに、奈良少年刑務所です。
晴れた青い空の下、重厚なレンガの古い建築物のなか、
少年犯罪を犯して、収監されている彼らの
こころの奥深く、彼ら自身、どこへ押しこめてしまったのかもわからなくなっていた魂からの言葉を、
寮さんは、「物語の教室」という場のなかで、寮さんの作品を通して、
彼らたちと、掘り起こし、息を吹き返した。
赤ん坊のような彼らのことばに、
詩という形で表現するという 過程を経て生まれる偶然ともいえるし、必然ともいえる きらめきを与えたのです。
てらいも、ねらいもない彼らのまっすぐな、ことばに、わたしたちは 圧倒されます。感動に心を震わせます。本能的に感じ取ります。
刑務所の壁を隔てて、今、わたしたちはこちらがわに、いるけれど、
わたしと彼らと、いったいなんのちがいがあるというのか?
生まれや、命の重さにちがいはない。
ただただ、幼かった彼らの、おかれた境遇、
それは、幼い彼らにはどうすることもできなかった 境遇というもののちがいから・・彼らは壁の中にいる。
わたしたちは、学んだり、仕事を与えられたり、親といっしょにいられたり、
食べたいものを食べ、寝たい時に寝ることができ・・・
でも、彼らは、寮さんと出会い、自分の思いを誰かに受け止めてもらうことによって、
人間性をとりもどし、だれかの思いを受け止められる存在へと変化した。
現代社会に忙殺された、ささくれの心のわたしたちより、やわらかで、傷つくことをも知りつくし、なおも、人を信じることをしっている彼らが、
再び、社会に戻って、社会人として生きるとき、
わたしたちの彼らへの反応がどうであるかで、彼らの生き方が大きく分かれてしまう。
わたしたちとちがわない、
もしかしたら、もうひとつの分かれ道を歩いた自分のこと、として、感じてみよう。
ともに生きよう。
私たちの罪をかわりに背負い、つぐなっているかもしれない彼らとともに。
こどもが愛されて育つことができる社会を、大人をつくる義務と責任がある。
星兎
児童書は児童だけが読む本ではありません。児童書というのは、かつて児童だった人が読む本です。児童書を読むと、子供の頃を思い出します。子供の頃の自分に届きそうで届かなくてものすごく切なくなります。でも、児童書はすごく純粋だから、大人のドロドロした世界に疲れた時にちょっと読んでみると癒しになります。この本は、本当に癒しになります。《――少年ユーリと等身大のうさぎ。2人の出会いは突然で、その別れはユーリの心に、何かあたたかいものを残した……。美しく、純粋な、宝石のような物語――。》ぜひ、大人の方に読んでいただきたい、そんな一冊です。あまりにもステキな物語だったので、いろんな人に無理やり押し付けて読ませたりしました(笑)。プレゼントに最適な本です。大人になってどこかに忘れてきてしまった純粋な心を思い出してください。
ノスタルギガンテス
まずなによりも,表紙に使われている深い森の写真が印象的だった。あの心地よく湿った森の空気,静寂こそ,きっとこの作品には相応しいのだろう。
主人公の少年が引き起こした,けれども彼自身は少しも望んでいなかった1つの事件――というよりは現象――に,現実味は全くない。これは1つの,大人の為の寓話だろう。ぜひ,雨音だけが響く静かな夜に,1人きりで読んでもらいたい……そんな本だ。
どうぞ,ご一読を。きっと忘れていた記憶を読み覚ましてくれる1冊になることだろう。