軍神広瀬武夫の生涯 (新人物文庫)
帝国海軍大尉の広瀬武夫は、1897年(明治30年)からロシアへ留学後、ロシア駐在武官となる。
帝国陸軍少佐の 田中義一も一年後の1898年(明治31年)からロシア駐在武官として赴任していた。
二人が交友していた時の有名なエピソードであるが、ロシア貴族などとの付き合いから、どうしてもダンスを避けても居れなくなり、田中から誘ってダンスのレッスンを一緒に受けたことである。
無骨の二人がダンスが苦手で厳しい女性教師に尻を鞭で叩かれながらのレッスン風景を想像すると可笑しくなるが、本人たちは、かなり真剣だったのだろう。
”総力戦国家の先導者「田中義一」(纐纈厚著)”、を読み終わって、本書、”軍神「広瀬武夫」の生涯(高橋安美著)”、を続けて読んでみたら、日清、日露戦争を戦い、”坂の上の雲”へ健気へ登ってゆく国家の姿が、より鮮明に観えてきた。
ロシア武官時代の後、広瀬武夫は、日露開戦直後の1904年(明治37年)、三次に渡って行われた旅順港閉塞作戦に参加して、一次は無事帰還したのだが、二次作戦帰還時に敵砲弾の直撃を受け、短い三十六年の生涯を終える。
田中義一は、その後軍人としての地位を極めた後、総理大臣にまでなってしまったのである。
広瀬武夫
ドラマ「坂の上の雲」で描かれている格好よさに惹かれ広瀬武夫の人となりを知ることができればと思い手にとりました。本書後掲の協力者一覧、参考文献を見る限り丹念に資料にあたって書かれた評伝小説だと思います。著者が大分出身で同郷の偉人を著したものであることを割り引いても、広瀬氏が素晴らしい人間であることがわかる内容で、読後、こうした好人物が早世したことが惜しまれてなりませんでした。軍神として祭られたが故に、現代において広く教育の場で同氏が取り扱われることは殆どないのかもしれませんが、今のような時代だからこそ、一本筋の通った氏の生き様を子供たちに知らしめ手本にしてもいいと思いました。読みやすい文体で、出版社の意向でしょうがルビがふられた漢字も多く、広い世代で読むことができる良い本だと思います。是非これから人間形成が進む中学・高校の世代の子供にも読んでもらい、人として男としての格好良さに触れて欲しいと思います。