NHK少年ドラマ・アンソロジーI [DVD]
NHK少年ドラマシリーズの記念すべき第1作目!「なぞの転校生」「赤外音楽」「まぼろしのペンフレンド」とともに大好きな作品だ!99作品も続くことになるシリーズの第1作。ガキの頃は色んなTVを観てきたが、その中でも最高のインパクトと完成度をもつ作品だ!‥番組が始まると、故・城達也氏の緊迫感のある「ある出来事」のナレーションが‥。あまりのリアルさに、トイレに行けなかった事も‥(10歳のガキだったからね‥笑)DVDには残念なことに最終話しか収録されていないが、リアルタイムで観まくった私には記憶を辿りながら思い出すのに十分だ!放映当時に観れなかった方々を可哀想に思う(少し優越感!‥笑)冗談じゃなく、本当にこの作品を観ていた当時まさに「カルチャーショック」そのものだった!しっかりとしたストーリー、抜群な演出、子供向けだからと、手を決して抜かない俳優陣!主人公の和子の「お姉さん」ぶりとセーラー服にドキドキしながら観てました!(お姉さんが主人公のドラマは初めてだったから、変に萌えてた‥笑)筒井康隆氏は本当に最高!最近公開された劇場アニメで何度目の映像化でしょうか?知世ちゃんの映画や、内田有紀のTVもヨカッタが、私は「時をかける少女」の映像化は、少年ドラマシリーズ第1作目しかない!あんなに先が観たくて仕方がなかったTVドラマはこの作品が初めて!かえすがえすも、全話そろってなくて残念無念!(TV版寅さんも!)最終話しかなくても人々の心にこれからも受け継がれる名作です!
珍妃の井戸 (講談社文庫)
蒼穹の昴みたいな壮大なスケールの作品の後、
ちょっと軽快な、本作のような作品も書ける浅田次郎のテクニックを感じます。
蒼穹の昴と流れを汲むけれど、まったく別の作品だと思うと
味わい深く楽しめる物語です。
ULTRA BLUE
宇多田ヒカルの4年ぶり4枚目のアルバム、「ULTRA BLUE」。
以前ほどの勢いは無く、当初のR&B路線は薄れた彼女の楽曲ですが、
ソングライティング力は作品を発表するごとに向上しているような印象を受けます。
とにかくメロディが素晴らしいです。
美麗で堂々たる神秘的・幻想的なメロディ、様々な要素を取り込んだ不思議なサウンドは、
日本的なポップスでありながら、きっちりと耳の鼓膜に残るものがあり、聴き込むほど味が出てきます。
「Keep Tryin'」のように不思議と明るい楽曲、「Be My Last」のように哀愁を帯びたメロディが綺麗な楽曲、
「BLUE」「Passion」のように透明感のある伸びやかなメロディが特徴の楽曲など、
全体的に良くまとまりつつも、曲のひとつひとつで違ったサウンドを魅せる楽曲群は素晴らしいです。
宇多田ヒカルの歌声そのものは、歌唱力もそれほど高いわけではなく、
1stアルバムの時代と比べて喉の張り・強さがでた個性的な歌声ですが、
美麗で堂々たるメロディと上手に馴染んでおり、自ら作りこんだ曲の邪魔をしないように歌っていて、
メロディとリズムと歌声が絶妙なハーモニーを生み出しているような、そんな印象をもちました。
個性的な歌声で好き嫌いが分かれそうではありますが、メロディと上手に馴染んだ嫌気のない声が好きです。
独特の感性からなる不思議で綺麗な詞世界も、楽曲ごとにひとつひとつ違った表情を見せています。
特に、「Be My Last」の詞が個人的にお気に入りで、シンプルな詞だからこそ奥深さが感じられます。
神秘的・幻想的なメロディ、様々な要素を取り込むサウンド、綺麗な詞世界、癖になる曲展開、
それらと上手に馴染みこむ歌声とハーモニーなど、彼女はボーカリストとして評価されているのでなく、
総合的な音楽家・ソングライターの宇多田ヒカルとして、評価されているように思えます。
連続テレビ小説 ファイト 総集編 [DVD]
ある出来事がきっかけで、家族の心は次第にバラバラになり、学校では親友に裏切られ傷ついていく・・・。
本仮屋ユイカさん演じるヒロイン木戸優は、とっても繊細な心の持ち主です。
だから物語の前半では、そんな逆境の下、瞳はうつろで表情も冴えず、うつむき涙するシーンが続きます。
しかし、優はその名の通り心優しいだけではなく、芯の強い少女でもあるのです。
競走馬ジョンコとの心の交流や、恋愛、仕事といった経験を通じて、次第に自分の夢に近づいていきます。
物語の後半、ぐんぐん輝きを増していく優の瞳は、彼女の心の変化を雄弁に語って、圧巻です。
木戸優になりきり、その成長過程を見事に演じ切った本仮屋ユイカさんと、味のある名演技でしっかり脇を固めたベテラン俳優陣が見事に調和した、見応えのある作品です。
朝ドラの総集編ですが、放送時に見逃してしまった方、優の成長物語をぜひ見てください。お薦めします。
砂の器 [VHS]
この映画を「メロドラマ」と呼ぶ事は、容易である。事実、メロドラマ的な部分は有る。又、幼い頃、放浪生活を送って、教育を受けられなかった人物が、ピアニストであり、作曲家である様な地位を得ると言ふ設定に無理で有る事も明らかである。しかし、私は、この映画の、そうした欠点をあげつらひたいとは思はない。
私は、この映画を、1970年代に映画館で観た。その時の衝撃は忘れる事が出来無いが、今思えば、戦前の日本の差別と貧困を、戦後に結び付ける事が出来たのは、1970年代が最後であっただろう。「戦前」が更に遠くなる1980年代以降にこの物語を映画にしても、もう、観客は、「戦前」の悲劇を現実感を持って見つめる事は出来無かったに違い無い。−−だから、この物語を21世紀の物語に変えてテレビドラマにする事は、空しいのである。
いい映画である。先ず、『羅生門』や『切腹』で、過去と現在が交錯する台本を書いて来た脚本家、橋本忍が加わった台本が、見事である。
又、感傷的ではあるが、この映画の音楽は、私も好きである。そして、私は、何よりも、この映画に漂ふ旅情が、好きである。−−この映画は、私を、1970年代の日本に連れ戻してくれるかの様である。−−日本の美しい風景を至る所で見せながら、その美しい風景の中に、かつて、悲惨な運命を強いられた名も無い人々が居た事を観客に想起させるこの映画は、これからも、多くの人々を感動させ続けるに違い無い。
(西岡昌紀・内科医/吉川友梨ちゃん失踪から3年目の日に)