人工社会―複雑系とマルチエージェント・シミュレーション
私はその方面の専門でないけれども、興味が湧いてきて社会学の著作を読むようになったのだが、どうもわかりにくい。いろいろと社会現象の説明や解釈がなされるが、「それってほんとうなの?」「どうやって実証するの?」という疑問が常にあった。そんなときに読んだのがこの本。おそらく社会学系の学問ってさまざまに条件を変えての実験ができるわけでもないし、実証なんていっても難しいだろう。それでもモデル化や数値実験などを駆使して説得力のある現象の解釈や説明があってもよいだろうという考えを実際にやって見せているのがこの本と思っている。読んでみるとモデルは極端に単純であり、現実の社会現象を精度よく再現など到底してないが、それでも現実社会の現象のなんらかの性質をこれだけ単純なモデルで表現できるのは、おもしろい。読んでいるともっとこういうモデルにしたらどうだろう、とか自分でやってみたくなる。
私のしる限り経済学以外の、文化の伝播や民族間紛争などの現象を構成的アプローチで説明を試みたものってあまり見たことない。その意味でもとても新鮮な感じで読んだ。
リスク分析・シミュレーション入門―Crystal Ballを利用したビジネスプランニングの実際
私はコーポレートファイナンスの分野でモンテカルロシミュレーションを用いた論文を準備中であるが本書にはとことんお世話になった。 単にCrystal Ballソフトを購入するきっかけになったのみならず、経営意思決定にモンテカルロ法を導入する意味、ノンパラメトリック検定などを深く勉強するきっかけになったからである。 本書はExcel上で動くモンテカルロシミュレーションソフトCrystal Ballの解説書である。そのソフトは米国のビジネススクール、エクセレントカンパニーで広く意思決定のツールとして用いられている。ビジネスモデルをExcel上で組み立ててから、入力パラメターに分布を与えると乱数を発生させ出力値の度数分布が得られる。その作業は非常に簡単で20年ほど前ファイナンス電卓HP12Cが米国を席巻したのに匹敵するパワーを持っている。 本書は単に解説書にとどまらず統計的考え方が自然に身につくように構成されている。 なお学習用のCrystal Ballソフトが添付されているが、乱数発生が1000回にかぎられているなど制限がある。