世界の測量 ガウスとフンボルトの物語
小説です。伝記ではありません。測量の苦労話でもありません。科学小説でもありません。測量の本と勘違いして購入したのはお笑い(1年放っておいてから読みました);
普段、小説もドイツも興味ない私としては、ガウス、フンボルトだけでなく、カント、ゲーテ、ウェーバーなども絡む”ドイツ”が輝いた一つの時代の時代の小説として、”ああ、そういう時代だった”と納得しながら、個々のエピソードには目新しいものはないが、ハリーポッター的に楽しく読みました。
次はガウスの伝記でも読むかな
生き物たちは3/4が好き 多様な生物界を支配する単純な法則
本書は「In the Beat of a Heart: Life, Energy, and the Unity of Nature」の翻訳です。「動物の標準代謝は体重の3/4乗に比例する。この3/4乗則に生命のもつ基本的な設計の原理が隠れている」と「ゾウの時間 ネズミの時間 ― サイズの生物学」(本川達雄, 1992)でも紹介されていた「3/4乗則」(Kleiber's law)ですが、当時は数式で導出できてませんでした。本書の前半では、この「3/4乗則」に関する歴史的背景と解決策が説明されます。物質/エネルギーの通り道である"血管"を最適に配管する原則をフラクタル科学(自己相似性)と流体力学の観点で数式化する と「3/4乗則」を説明できるそうです。(West, Brown, Enquist, Science (1997)(※)) 本書の後半では、この"自己相似性"と"エネルギー流"の観点が生態(メタ代謝)にも応用が効きそうだということが説明されます。
読み終えると「生物の世界も実は"経済的"なのかも?」と思ったりします。物理現象の大部分は「変分原理」(フェルマーの原理〜最小作用の原理)で統一的に理解できますが、本書で紹介される原理も「エネルギー流を如何に効率化するか?」という意味での"経済原理"と言えそうです。本書の物理学的アプローチは、生物のサイズ・形・寿命・個体数(分布)を理解する方法として『あると思います』。
本書では数式は殆ど出てきませんが、却って読み難いと感じるかも。(本川先生の本や"Life's Universal Scaling Law" (West & Brown, Physics Today (2004)も併読すると良いかも) べき乗則(フラクタル〜ネットワーク〜複雑系)の知見があると更に楽しめます。
(※)植物の場合は3/4乗ではなく1乗に近いという報告があります (Reichほか, Nature (2006))。