人類を幸せにする国・日本(祥伝社新書218)
週刊ポストで逆説の日本史を連載している井沢元彦氏の新書。
基本的に世界が抱えている大きな問題を解決する力を日本人は持っているし、これまでもさまざまな技術でそれを実現してきたという趣旨の話が続きます。そして日本人論のまとめとして高齢化社会などで世界初となるようなモデルになるような国を目指すべきと結んでいます・・・ただ具体的な提言までは踏み込んでないです。それはこの本の趣旨から離れるためかもしれません。
この新書で井沢氏の得意とする深い日本史の内容などはそれほどなく、これまで井沢元彦氏の著作を読んだことのない方でもスラスラ読めるでしょう。さまざまなニュースなどで紹介されてきた事例ばかりですから。
ただ、井沢元彦氏のファン層などの方々には物足りなく感じるかもしれません。
逆説の日本史17 江戸成熟編 アイヌ民族と幕府崩壊の謎
本シリーズも17巻。ファーンのはしくれとして、歴史への新鮮な「驚き」を本書や他の井沢氏の著作から数多示されてきた者の一人として、本書は見逃せないものであり、購入。
本書の題材は、
・これまで小生もほとんど知らなかったアイヌ民族の歴史
・「現人神思想創作の巨人」、本居宣長と平田篤胤の国学の内容とその思想の成り行き
・幕末へと繋がる日本外交の経緯と実像
これらの井沢氏によるスケッチと考察である。
半日で素読完了。本巻でも氏の非凡な洞察と軽快かつ鋭い論理とが展開されており、日本史の「山場」、幕末に向けて鋭さと冴えを増している、というのが全体的な感想。
・アイヌ史は「知らなかった」のでとても勉強になった。日本史を考える上でアイヌ史を抜きにしては考えられないということを教えてもらった。その上で維新後の同和政策と分離・差別政策とを比較・考察し、単純な善悪では測りえない、両者の「功罪」について、多角的な視点から、ヒジョーに興味深い分析を示す。ヒジョーに面白かった。
・本居宣長・平田篤胤の国学の展開のスケッチと分析も、いわゆる宗教的観点を加味してとても説得力に富んだ展開。この点は歴史を通じて「日本人とは何か」という、このシリーズが問うてきた根本的な問題・謎に大きく関わるところであり、一般的にはタブー視されていて知られていない事実を掘り起こし、そこに論理の光を当てる。氏の仕事には脱帽する。
・そして幕末の日本外交。この項は著者が以前「攘夷と護憲」で一度分析を行いその結果を世に問うたところでもあり、今日の日本にも共通する日本外交・安全保障の致命的欠陥を証明する形で展開。正に筆は「冴え、踊」っている。
井沢氏に抽象的なレッテルを貼り付けて黙殺しようとする人々がいるのは知っていたが、未だにその影響を受けて氏の言説に拒否反応を示す若者が少なくないと聞く。
別に氏の考え方に無条件に賛同する必要は全くない。反対しても全くOK。ただ、拒否してしまえば情報が遮断されるという損が生じるだけである。読んだ上で賛否その他をご自身の頭で考えてみてはいかがであろうか。
この春お勧めの一書です。みなさんどうぞ!!
世界が愛した日本
個人的に、近代史の本はかなり読んでいるので、本著で取り上げられたエピソードは全て知っていたため、新たな発見はなかった。
しかし、それでも、コンパクトに簡易に、これまでの私の知識より詳しく記されたそうしたエピソードを読みながら、改めて感動で胸を熱くしてしまいました。
イラン・イラク戦争の混乱期にイラク在住の日本人を救うために飛び立ってくれたトルコの飛行機の第1章の逸話はいつ読んでも格別ですし、大東亜戦争を単なる「太平洋戦争」(侵略戦争=東京裁判史観)と思っている人は第5章を読んでみてくれ!って思いが強いです。
こうした史実を知ってこそ、トルコやインドネシアなどに対する親近感と友好感情を生み出し、国際的な友好関係のための必須の知識だと思うのですが、歪んだイデオロギーを持つ日本のメディアでは全く取り上げられずに、日本を憎め!と主張し「世界平和」を唱えます。
(過去の歴史・慣習・文化・民族性すべてを否定して、「世界は一つ」(世界革命)になって、「世界平和」が実現すると信じているのでしょう)
本当の近代史を知らない人たちにぜひ読んでもらいたい本ですが、ただ、第6章だけは違和感を感じました。他の章は先人たちの行いに感動し、他国の人たちに感謝の念を抱くものでしたが、第6章を読んでいる時だけは苛立ちを感じました。別に単に韓国・韓国人が嫌いというわけではなく(親しくしている韓国人もいます)、「世界が愛した日本」のテーマにそぐわないように思えました。