オペラ座の怪人 スペシャル・エディション(2枚組) [DVD]
いろいろな意味で、非常に優れたミュージカル作品だと思う。
まず、内容面だが、ガストン・ルルーの原作を下敷きに、普遍的なテーマを斬新なスタイルで描いていることにあると思う。優しく、必ず幸せにしてくれるであろう男性と、危険で一緒にいても不幸になりそうな男性(このことは、私の一番好きなナンバーAll I Ask of You において、それぞれの男性がChristineに歌いかける科白が、 Raoulのそれが “Let me lead you from your solitude” であるのに対して、Phantom のは、“Lead me, save me from my solitude”であることに象徴されている)との間で揺れる女性というのは、源氏物語の浮舟と匂宮・薫大将の三角関係にも遡れる普遍的なテーマである。(そういえば、劇中最も美しいシーンであるPhantomがchristineを船に乗せ、地下水路をこぎ行くシーンは、匂宮が浮舟を舟に乗せて連れ出すシーンと似ている)
また、ChristineはPhantomに亡父の面影を投影しているので、これも古典的なエレクトラ・コンプレックスから説明できよう。
孤児である彼女の孤独とPhantomの孤独が共鳴しあって惹かれ合ったということも説得力をもって伝わってくる。
そして、これがミュージカルの場合、非常に重要な点なのだが、ミュージカルという形式の利点を十二分に生かしていることである。
ミュージカルには、「どうしてそこで急に歌い出すのか?」という根本的な不自然さが常に付きまとう(三谷幸喜の『オケピ!』にもそういう科白があるし、タモリもだからミュージカルは嫌いだと公言している)が、この作品では、舞台がオペラ座であり、主人公はPhantomと歌の指導を通じて心を通わせるという設定だから、歌うことはむしろ必然である。
さらに、作曲家が愛する女性の歌をプロデュースして成功させるというストーリーは、現実のA ウェバーと、劇場版初演当時の妻でchristine役のサラ・ブライトマン(後に離婚)の関係とも完全に重なっている。(日本でもTKと華原朋美がそのような関係だった)
そしてまた、劇中歌も、絶妙に物語とリンクしている。
RaoulがChristineを幼馴染と気づく場面で彼女が歌っているアリアThink of Meは”We never said our love was evergreen, or as unchanging as the sea, but please promise me, that sometimes, you will think of me!”となっており、その直後の再会のシーンで、Raoulは、子供のころ、彼女の赤いスカーフを拾うために海に入ってずぶぬれになった思い出を語る。
また、Phantomの、天才的な才能を持ちながら社会から隔絶された孤独感も、彼が作曲したという設定の音楽の素晴らしさとのコントラストで効果的に描かれている。これは、映画版『砂の器』(TV版は噴飯物)にも共通する。
Masqueradeはまさに、仮面の下に孤独を隠すPhantomの生き様そのもの、そして、劇の最後のフレーズは、”Hide your face, so the world will never find you”である!
劇場版との比較では、まず、プロローグの終わりにシャンデリアのベールが解かれるところで、シャンデリアの光が当たったところから、モノクロの画面がカラーの19世紀末の輝かしいオペラ座の場面に変わっていくという、映画ならではの演出がすばらしい。
また、劇場版では、Phantomにやられっぱなしでどちらかというと情けないRaoulが、映画版では仮面舞踏会の後でも決闘しようと剣を抜いたり、墓場のシーンでは、Phantomと戦って実際にねじ伏せるところまでいっている点で、優しいだけでなく、強く勇敢な理想的な男性という面が強調されている。
また、映画版では最後にRaoulが競り落とした猿のオルゴールを妻だったChristineの墓に供えると、そこにPhantomのバラが置かれているという場面が付け加えられている。
ひとつ、映画版の方がリアリティを欠くのは、マダム・ジリーがPhantomが見世物小屋から逃亡するのを助けたという設定だ。劇場版ですら、娘のMEGが、朋輩の出世に全く嫉妬しないのが、不自然なのだが、映画では、さらにその母親が恩人なわけだから、「なぜ私の娘にこそ個人指導してくれない?」ということになりはしないか?この親子はお人よし過ぎないか、と思うのは私の性格がひねすぎているから?
Phantomの救いのない孤独な魂、最後のシーンは、涙が止まらなくなった。
クリックまんが オペラ座の怪人
『垣野内成美のロマンチック・ホラー』として、非常に完成度が高い作品です。オチがまさに“ファントム”で、予想以上には怖かったので、個人的には大満足です。絵は扉絵同様、全編美しく(ここにまず感動しました。)、演出も良く、音楽(BGM)も場面に合っていてカッコ良いので、この定価なら文句なしに充実していると言えるのでは。ただし『読み物』なので、クリスティーヌ等の歌声は入ってません。ガストン・ルルーの原作のみではなく、ミュージカル等、色々なオペラ座の怪人からエッセンスを(本当に上手に)抽出して編成したほぼオリジナルストーリーです(ツッ込みどころは多いですが、それもまた楽しい)。なので、原作好きの方には、かなり別物の気配がするので受け入れられないかも知れません。それより何より、最大の欠点は、クリックしないと読めないのが非常に面倒くさいということ。くりっくまんがなので、仕方がないけど・・・。
オペラ座の怪人 (角川文庫)
映画の「オペラ座の怪人」を見てこの原作本を購入しました。
いろいろな意見があるでしょうが私には「純愛」に思えました。
怪人は怪人なりにクリスティーヌを深く愛していたんだと
思います。
そしてこの本には「純愛」というより深く愛しすぎた故の
「狂った純愛」が感じ取れました。
とにかく読み応えがあります。
映画では描かれなかったホラーな部分もたくさんあります。
オペラ座の構造など頭に想像しながら最後まで
グイグイと惹き付けられてしばらくは「オペラ座の怪人」の
中毒になること間違いありませんよ。
オペラ座の怪人 通常版 [DVD]
私は劇団四季の「オペラ座の怪人」を過去に2回見ている。クライマックスでクリスティーヌがファントムにキスする場面、ファントムが初めて真実の愛に触れ、愛するが故にクリスティームを諦める場面は何度見ても切なくて、またも泣けてしまった。
そんな涙もろい中年オヤジのレビューで参考にならないかもしれないが、ミュージカル映画としてはなかなかの出来だと思う。
もともとミュージカルにリアリティーは期待しないほうがいいので、ディティールには目を瞑った方がいい。
ただ、実際のミュージカルを観ていないと少々つまらないと感じるかもしれない。
「オペラ座の怪人」の魅力は華やかな舞台と美しい音楽だが、そこに秘められたテーマは「愛」と愛するゆえの「苦悩」「憎悪」「哀しみ」と普遍的なものが凝縮して描かれていることだ。
映画を見ていて、ファントムが棲むオペラ座の地下のラビュリンスはまさに人間の心の闇の世界そのものだと感じた。ファントムは誰の心にもいるのかもしれない。
迫力ある美しい映像と音楽で、劇団四季のミュージカルを思い出しながら見た。舞台を観た人には是非お勧めである。
The Phantom of the Opera: Piano Vocal Selections from The Block Buster Movie
まず、ファントム・ファンには装丁から感激ものです。表紙は映画のパンフレットと同じファントムとクリスティーヌの写真、裏表紙はあのマスクのアップの写真(もしかして実物大!?)、革の質感まで伝わってくるようです。
中は最初にカラー写真が7ページ、途中、曲の合間に白黒の写真が合計4ページ入っていて、どの写真も映画を思い起こさせます。
曲は12曲入っていて、基本的にミュージカル版の楽譜に近いようです。
新しく「THE FAIRGROUND」「JOURNEY TO CEMETERY」「LEARN TO BE LONELY」の3曲が追加されています。3曲とも転調がなく、弾きやすくアレンジされていると思います。