風の陣【風雲篇】 (PHP文芸文庫)
奈良時代は橘奈良麻呂の乱をスタートに、書き継がれてきたこの小説もいよいよラストを迎えました。
歴史の授業では通り一遍で終わってしまうこの時代ですが、この本を読んでゆくうちに、その勢力分布の複雑さや、意外な関連にびっくりもしました。
そして、何よりも「蝦夷」と言う存在と朝廷との関係も、歴史認識を改めさせられた部分が多々ありました。
最後になってようやく阿弖流為が登場しますが、彼が主人公の物語であればもう少し知っていると思うのですが、その前ですから全く知らない世界でした。
ただ、その中でも、「蝦夷」の人々の忍耐と力強さを感じました。
それは、決して過去のものと言うことではなく、もう一度日本人が取り戻さんければいけない感性なのかも知れません。
その意味では、鮮麻呂は格好良すぎます。
こんな男がいれば素晴らしいと思うし、世の中はうんと良くなるだろうと思います。
阿弖流為2世 (GOTTA COMICS)
歴史とSFの融合。千二百年の時を越えて蘇った古代の神々が、”龍”をめぐって現代で繰り広げる壮絶な争い――この壮大なテーマの下、男たちの熱き戦いが展開されるのだが、この漫画「阿弖流為II世」の真骨頂はまた別のところにある。ひとことで言えば「社会風刺」。
とにかく作中のいたるところに、狙ってやってるとしか思えないパロディが散りばめられている。西暦2000年という記念すべき年に起こった時事ネタだ。保険金殺人、(雪印の)牛乳、MATRIX、少年犯罪、首相の交代劇、ワイドショーのリポーター、都知事、etc・・・。これでもかという位、強烈なネタのオンパレードである。しかも、読んでるほうは笑いをこらえずにはいられないのに、作品の人物はみな大マジメな顔でやってるのだから凄い。そして、極めつけが原哲夫先生の劇画調の作画。この絵にしてこの内容、まさに世紀の狭間に誕生したスーパーコミックと呼ぶに相応しい仕上がりだ。また、巻末に少年ジャンプに掲載された読み切り「輝石燃ゆる時」が収録されている。ファンには嬉しい配慮だ。
私の拙い文章ではその面白さを存分に伝えられないのが残念だがとにかくおすすめとしか言いようがないんです。ぜひ一度手に取って読んでみてください。
風の陣 [立志篇]
同じ高橋克彦氏の「火怨」の前の時代設定。
2010年、来年が平城遷都1300年らしいのですが、その時代の蝦夷側からの話です。
「火怨」は、高橋氏の作品の中でも、ファンが多くいるようですし、このサイトでも評判がいい作品ですが、是非、この作品も、読まれることをお勧めします。
「火怨」の冒頭でも出てくる、物部天鈴が、若い時代に伊治砦麻呂(鮮麻呂)と、どうやって出会い、朝廷に組したと蝦夷からそしられた道嶋嶋足が、その二人とどんな関わりがあったか、を判ることで、「火怨」が、また数倍面白くなります。
京極夏彦よろしく、陰陽師の権化、天下の怪僧といわれた弓削道鏡も、吉備真備も、鮮やかに描かれています。
しかるに、、、この平城京の短い時代は、実に・・・面白い時代だと判ります。