砂漠の女ディリー
彼女が全身全霊をこめて投げた直球を、
正面でキャッチャーミットにおさめようと
自分の正位置を移動させ、
後ずさりしながら受け止めました。
ボールは受け手の私にとって重く、
ときおり逃げ出したい気分にもなる(私自身の)力不足は否めません。
文章の稚拙さや抑制の効かない部分が少々気になるけれど
それも含めて、彼女の熱く前向きな半生に
感動しました。
本書の発行後、少女割礼の現状が少しでも
改善されていればいいと思い
心から祈りました。
ディリー、砂漠に帰る
父の決めた結婚に反発して家を飛び出し、祖国ソマリアの過酷な生活から逃れ、トップモデルとなったワリス。ニューヨークに住み、夫と子供との幸せな暮らしが続くはずだったが、やがて彼女は子供を連れて、生活費を出さない夫のもとを去る決心をする。先進国でのせわしない暮らしに疲れきって、FGM廃絶運動への熱意も薄らいでいた彼女は「故郷に帰って家族に会いたい」と切望するようになっていた。そんな中、兄からの突然の電話で、再びワリスの運命が回りはじめる。
飛行機を乗り継ぎ、やっと戻ってくることのできた祖国ソマリアの地。都会の暮らしで失いかけていた記憶が、ひとつひとつ蘇っていく。苦労してたどり着いた村で、ワリスは母親・兄弟・親戚と再会を果たす。電話もなく、通信手段もなにもない砂漠―それなのに、人々の口伝で彼女の帰郷は氏族中に広まり、やがては行方知れず同然であった父親とも出会うことになる。気丈だった父・母・叔父は皆、病に冒され、ワリスは心を痛めるが、それでも、ソマリアの人々は神や万物・自然への感謝を忘れない。真っ青な空や降るような夜空の星の美しさ、つつましくも楽しく愉快な砂漠の夕べ。心豊かなソマリアの暮らしに戻り、ワリスは少しずつエネルギーを取り戻す。祖国の悪習・男尊女卑・飢餓や貧困を社会全体から変えていくために、やがてワリスは新たなヴィジョンを持つようになる…。
自信を持って、声に出して意見を言うことの大切さ。勇気を持って、実際に行動することの意味。逆境に負けない強い精神。自分を見失いかけていた時、人生で重要な多くのことに気づかせてくれた、素晴らしい本です。前著もお勧めします。