Denim(初回限定盤)
実際、今回Denimという名の曲はありません。最後の曲「人生の扉」にたった一節
「君のデニムの青が 褪せていくほど味わい増すように 長い旅路の果てに 輝く何かが誰にでもあるさ」
とあるだけなのですが、聞き込んでいくとこの一節が実に味わい深いものとなってきます。そう思ってよくこのアルバムに収録された曲たちを眺めなおしてみると、若い頃の何も怖いものなどないという時代の甘い甘い恋や哀しい結末を迎えた恋(でもこれはまだ人生の前半)の曲、少し熟していろいろ人生が判ってきた頃の大人の恋や、恋愛感情ばかりでない、人生の大切なパートナーを得たうれしさを表した曲、人生の後半、愛する人に先立たれた悲しみを歌った曲・・・つまり人生のいろんな場面を切り取った曲が連なっているのです。
そしてそのライナーノーツを見るとまさに書いてあるのです、「人生はまるでデニムのようだと、私は思う」と。
「歴史とともに素敵に色褪せたその青には、若き日のあのインディゴにはなかった深い味わいが生まれているはずだ」。今年ですでに52歳を迎えた竹内まりやさんならではの言葉だなぁと改めて思うとともに、数歳年下ではありますが、まさに私自身もそういう年齢になって同じことを痛感したからこそ、このアルバムが手放せなくなってしまったのだろうと思います。
「人生の扉」には
「満開の桜や色づく山の紅葉を この先いったい何度見ることになるのだろう」
というフレーズもあります。多分90歳越えるまで生きるよと歌詞の中で宣言している彼女が一方ではこういう気持ちになっていることもまたこの歳になればよくわかるんですよね。同世代の皆さん、きっと感動を覚えます。ぜひご一聴をお勧めします・・・
Live 30 years young [DVD]
同名のCDの方は今ひとつでしたが、こちらのLIVE映像ではセンチらしい演奏が楽しめる素晴らしい出来栄えです。20周年LIVEがレーザーディスクで発売されただけで、これまでなかなか演奏映像が入手出来なかっただけに、貴重な保存版DVDと言えます。
ハーモニーの美しさは相変わらずで、この年齢なのに現役でこれだけの演奏が出来る事はスゴイの一言につきます。
長年のファンとして苦言を少々。でも結局、センチって中野・告井・細井の三人のバンドなんだなと感じさせられる一面があり、五人のバンドじゃなかったのかよ、という失望感が少し生まれました。
個人的には「風景」が聞きたかったなぁ…。
Denim (通常盤)
大いなるトラディショナルといつか聴いた懐かしさ。竹内まりや、待望の6年振りのアルバムは、相も変わらぬ良質でポップ&スウィートなメロディラインに彩られた逸品だ。極めつけのスタンダードである1曲目の「君住む街角」から、思わずハミングしたくなるような幸福感に溢れている。以下、軽やかでメロウなポップスとしっとりしたバラードと言う魅惑の2本立て路線は、昔からのファンに何より安心感と郷愁を抱かせる。アルバムの最後に収録されている「人生の扉」を聴きつつ、上京した当時、銀座三越の化粧品売り場でタイアップ・ソングとして繰り返し流れていた「不思議なピーチパイ」の、その日本離れした垢抜けた感覚に羨望して以来30年近く、彼女が今も変わらぬ魅力を発している事、いっときではあったが、同じ大学のキャンパスで過ごした者として、素敵だと思う。
チャンスの前髪/人生の扉
「人生の扉」はアルバムDenimに納められていました。詞ばかりに気を取られていましたが、この作品は演奏も素晴らしい。ピアノ中心の静かな出だしだけれど、控えめなベースとドラムスがところどころで小気味良い音をかき鳴らしてくれています。中盤からのスチールギターとリードギターの音色とプレイがたまりませんね。そしてフラットマンドリンの出番。このフラットマンドリンの音は今まで生きてきた人生の出来事を思い起こさせてくれ、これからどう生きていくべきかを考えさせてくれました。本当に身が引き締まるような感じで聴くことができました。終盤の Denim のメッセージが聞こえてきたとき、そうかそういうことだったのかと納得、まりやさんの歌唱も曲と見事にマッチしています。詞良し、歌良し、曲良し、アレンジ良し、演奏良し、世界中のたくさんの人に聞いて貰いたい作品です。
一方、「チャンスの前髪」の方はサザンのハラ坊こと原由子さんがゲスト・ヴォーカルとして参加しており、なかなかいい味を出しています。まりやさんがどちらかと言うと、活発で歌い放つのに対し、優しく包み込むような歌い方、終盤どこから声を出してるんだーと言いたくなるのは私だけかな?こちらも素晴らしいアレンジ・演奏になっています。TVドラマの効果もあり、いい勝負になりそうですね。